私は長年、途上国の人々の開発という仕事に携わってきました。

今までの私は、職業人としての開発ワーカーでしたが、それ以外に人としての自分と開発を繋いでいる体験があることに気がついてきました。それが、私個人の豊かさを分かち合う、ということです。

何がその人にとって豊かさで、何を分かち合えるかは人それぞれでしょう。私が考えている私にできることは、機会を創り出し、分かち合うことです。

当社には確固とした理念はありますが、具体的な経営計画も経営目標もありません。周囲の人がその人なりの能力や時間に応じてできることを、会社の仕事としてとりあげています。目標達成のために人材を集めるのではなく、人を見て何ができるかを考えているのです。

主婦をはじめ、日本の社会の中でも機会を求めている人は多くいます。その一つひとつは、経済的には小さなものかもしれません。でも小さな機会を活かすことを集積し、社会と結びつけ、持続的なビジネスにしていくことは十分に可能であると考えています。

同じ社会に生きる者として、豊かさには責任が伴うことを自覚し、そして豊かさの連鎖が起きるように分かち合うことこそが、真に必要とされていることなのだと思います。

野田直人(のだ なおと)
(有)人の森 代表取締役


当社の業務内容が、国際協力からインターネット広告業、はたまた不動産賃貸業まで多岐にわたっていることに驚かれる方もいらっしゃると思います。

しかし、企業理念は明確に1つに集約されています。

それは「多様性を尊重し、『学ぶ』、『つながる』、『生み出す』機会を提供することにより、より豊かな社会の実現を目指すこと」です。

途上国の農民は、先進国の工業型農業を営む人々とは違い、集約的な農業ではなく、CDR(Complex, Diverse, Risk-prone)(複雑で多様でリスクに左右されやすい)とよばれる農業を営み、生計をたてているそうです。CDR農民は往々にして、営農システムにおける労働利用を複雑化、多様化、集約化することによって、また活動の数を増やすこと、管理運営を最大化することによって、リスクを減少させ、食料と所得を増加させようとしています。

夫婦両輪で始めたこの小さい会社も、この途上国の農民の戦略から学び、国際協力のコンサルティングやインターネット広告代理業、不動産賃貸業などの複数の収入源を確保し成長する戦略をとっています。

また、「人の森」ですから、集まる人の数だけ、仕事の種類が増えていくかもしれません。事業領域からではなくまず人から始まる――。

この新しいビジネスモデルにチャレンジしながら収益をあげ、その結果として、国際協力の人材育成やNGO支援を行い、21世紀にふさわしい新しい社会を創るための一石を投じていきたいと考えています。

野田さえ子(のだ さえこ)
(有)人の森 取締役